はじめに
Fake-IP DNS は、ドメイン名を問い合わせた端末に実際の接続先 IP アドレスではなく、指定範囲内の仮想 IP アドレスを返す DNS の動作モードです。Mihomo はその対応関係を内部で管理し、アプリケーションが仮想 IP に接続すると、元のドメイン名を手掛かりに通信を処理します。多くのドメインへ同時に接続するアプリでも、名前解決を効率よく扱えるのが特徴です。
この記事では、Windows 版 Clash Verge Rev で Fake-IP DNS を有効にし、設定を再読み込みして結果を確かめる手順を説明します。設定名や画面の配置は、Clash Verge Rev と Mihomo のバージョンによって異なる場合があります。画面上の表記が違うときは、使用中のプロファイルとコアの種類を確認しながら進めてください。
この記事の目標
DNS 設定を安全に編集し、Fake-IP の応答とプロキシ通信が実際に反映されているかを順番に確認します。
先に確認してください
Fake-IP は DNS だけを変更すれば必ず利用できる機能ではありません。Mihomo コアが有効であることに加え、Windows の通信が Clash に届く構成(たとえば TUN モードや DNS の適切な転送設定)になっている必要があります。
1編集前の確認とバックアップ
最初に Clash Verge Rev を起動し、現在使用しているプロファイルとコアを確認します。Fake-IP DNS は Mihomo の機能として設定するため、別のコアを使っている場合は設定項目が認識されない、または期待どおりに動作しないことがあります。プロファイルを選択した状態で、コアが Mihomo になっているかを確認してください。
次に、DNS 設定をどこで管理しているかを把握します。サブスクリプションから取得した YAML を直接編集すると、プロファイルの更新時に変更が上書きされることがあります。更新後も設定を保ちたい場合は、Clash Verge Rev のプロファイル編集・オーバーライド機能を利用するか、手元で管理できるローカルプロファイルに必要な設定を反映してください。利用できる方法や画面名はバージョンによって異なるため、現在の設定画面にある説明も確認しましょう。
- 使用中のプロファイル名を確認し、意図したプロファイルが選択されていることを確かめます。
- 設定を編集する前に、元の YAML を複製してバックアップします。ファイルの保存場所が分からない場合は、アプリ内のプロファイル管理画面から編集・保存の方法を確認してください。
- YAML を編集できるエディターで開き、文字コードを変えたり、既存の内容を一括置換したりしないよう注意します。
バックアップが重要な理由
設定に誤りがあると、プロファイルの読み込みに失敗したり、DNS 解決ができなくなったりする場合があります。変更前のファイルを残しておけば、問題が発生したときに元の状態へ戻せます。
2Fake-IP DNS の設定を追加する
YAML の最上位にある dns: セクションを探します。すでに DNS 設定がある場合は、同じ階層に別の dns: を追加せず、既存の項目を編集してください。同じキーを重複して記述すると、読み込みエラーや設定の予期しない解釈につながることがあります。
次の例は基本的な設定です。既存プロファイルの名前解決方針や、利用しているネットワーク環境に合わせて調整してください。
enable: true は Mihomo の DNS 機能を有効にし、enhanced-mode: fake-ip は Fake-IP モードを指定します。fake-ip-range は仮想 IP アドレスに使う範囲、nameserver はドメインの実際の名前解決に使用する DNS サーバーです。プロファイルにすでに nameserver、fallback、proxy-server-nameserver などがある場合は、それらを不用意に削除せず、既存の構成との整合性を保ってください。
YAML のインデントに注意する
YAML ではインデントが設定の階層を表します。上の例の enable と enhanced-mode は dns の下に置き、nameserver のアドレスはさらに一段下げて記述します。インデントには半角スペースを使い、タブ文字は避けてください。また、ほかの設定項目と同じ階層になっているかも確認します。
DNS の「有効化」スイッチが画面にある場合でも、画面上のスイッチと YAML の設定が別々に管理されている可能性があります。どちらか一方だけを変更して済ませず、現在有効なプロファイルに最終的な設定が含まれているか確認することが大切です。
3設定を保存して再読み込みする
YAML を編集したら、ファイルを保存し、Clash Verge Rev に戻ります。プロファイル一覧で編集したプロファイルが選択されていることを確認し、画面にある更新・再読み込みの操作を実行してください。サブスクリプションの更新と、ローカル設定の再読み込みは意味が異なる場合があります。設定を残したいときは、意図せずサブスクリプションを再取得して変更を失わないよう、操作内容を確認してから実行します。
- 保存した YAML に、
dns:が一つだけあり、enableとenhanced-modeの値が正しいことを確認します。 - Clash Verge Rev で対象のプロファイルを選択し、設定の読み込みまたは適用を行います。
- コアが起動していることを確認します。読み込みに失敗した場合は、エラー表示やログにある行番号・キー名を記録します。
- 必要な場合は TUN モードを有効にし、Windows の通信が Clash を経由する状態にします。TUN の利用には管理者権限が必要になることがあります。
設定は一度に一つずつ変更
DNS、ルール、TUN などを同時に変更すると、どの変更が原因で動作が変わったのか判断しにくくなります。まず DNS 設定を適用して動作を確認し、必要な追加設定を段階的に行いましょう。
4Fake-IP の動作を確認する
設定を読み込めたら、DNS の応答と通信経路を別々に確認します。Fake-IP の応答は、通常の公開 DNS に問い合わせたときではなく、Mihomo の DNS を通ったときに返されます。そのため、PowerShell やコマンドプロンプトから行うテストでは、Windows の DNS 設定や TUN の DNS 転送状態によって結果が変わる点に注意してください。
DNS の応答を確認する
まず Clash Verge Rev のログを開き、DNS 関連のエラーが出ていないかを確認します。その後、ブラウザーや DNS を利用するアプリで、普段アクセスできるドメインを開きます。TUN モードや DNS の転送設定が有効であれば、問い合わせが Mihomo に届き、Fake-IP の範囲から応答が返ることがあります。標準設定例の 198.18.0.1/16 を利用している場合、応答アドレスが 198.18.x.x の範囲にあるかが一つの目安です。
Windows の nslookup で確認する場合は、既定の DNS サーバーが Mihomo を通っているかを先に確かめてください。公開 DNS サーバーを明示して問い合わせる方法では、Clash の Fake-IP を確認できません。また、Windows の DNS キャッシュに以前の応答が残っていると見分けにくくなるため、設定を反映した後にキャッシュを消してから再試行する方法もあります。
この操作は Windows 側の DNS キャッシュを消去します。キャッシュを消した後、対象ドメインへ再度アクセスし、Clash Verge Rev のログや接続一覧に問い合わせ・通信が記録されるかを確認してください。すべてのドメインが常に同じ仮想 IP になるわけではなく、除外設定やアプリ側の DNS 処理によって応答が異なる場合もあります。
通信経路も合わせて確認する
DNS 応答が Fake-IP らしい値になっても、それだけで通信がプロキシ経由になったとは限りません。Clash Verge Rev の接続一覧やログで、テストしたドメインの通信が表示されているか確認します。さらに、ルールに従って選択されたポリシーまたはプロキシグループが想定どおりかを確認してください。DNS だけが成功し、接続が失敗する場合は、プロキシノードの状態やルールの選択も調べる必要があります。
5反映されないときの対処法
Fake-IP が返らない、アプリが名前解決に失敗する、または編集後にコアが起動しなくなった場合は、設定を戻す前に原因を一つずつ切り分けます。エラーが出た時刻、対象ドメイン、プロファイル名を記録しておくと、変更箇所を追いやすくなります。
- コアの読み込みエラー: YAML のインデント、重複した
dns:キー、コロンや引用符の誤りを確認します。ログに行番号が表示される場合は、その周辺の記述を見直してください。 - 変更が消えてしまう: サブスクリプションを更新した際に手動編集が上書きされていないか確認します。継続して使う設定は、適切なオーバーライド機能やローカルプロファイルで管理してください。
- DNS 応答が通常の IP のまま: DNS 問い合わせが Mihomo に届いているかを調べます。Windows の TUN モード、DNS の転送・リダイレクト設定、アプリ独自の DNS 利用が原因で、問い合わせが Clash を経由していないことがあります。
- Web サイトやアプリが開けない: Fake-IP の除外設定、ルール、ノードの接続状態を確認します。特定の LAN 機器やローカルドメインでは、実 IP を必要とする場合があります。対象をむやみに除外するのではなく、問題が起きるドメインだけを特定して調整してください。
- Windows のネットワークが不安定: まず Clash の TUN モードを一時的にオフにして変化を確認します。改善する場合は、競合する VPN、仮想ネットワークアダプター、ファイアウォール設定も確認し、必要ならバックアップした設定に戻します。
安易に設定を増やさない
インターネット上の YAML をそのまま追加すると、既存のルールや DNS 設定と競合することがあります。まずは現在のプロファイルにある DNS 項目を確認し、必要な変更だけを行ってください。
6安定して使うための運用ポイント
Fake-IP DNS は、設定を有効にした後も、プロファイルの更新やコアの変更によって動作が変わることがあります。更新後に接続トラブルが起きたときは、以前の設定と現在の設定を比較し、DNS の有効化状態、モード、ネームサーバー、除外項目が変わっていないか確認しましょう。プロファイル更新の前後で同じドメインをテストすると、原因の切り分けに役立ちます。
また、Fake-IP の動作確認では、DNS の応答だけでなく、実際の通信が Clash の接続一覧に現れることも確認してください。DNS が解決できても、ルールが意図しないグループを選んでいたり、ノードが停止していたりすれば、アプリの接続は失敗します。逆に、ブラウザーが正常に動作しているだけでは、ほかのアプリも同じ DNS 経路を使っているとは限りません。必要に応じて対象アプリごとにテストを行いましょう。
設定の変更内容と日時をメモし、安定していた YAML をバックアップしておくこともおすすめです。DNS の設定を変更する目的は、名前解決の経路を管理しやすくすることです。通信の問題が解決しない場合は、DNS だけに原因を絞らず、プロキシルール、TUN、Windows のネットワーク環境を順番に確認してください。
Clash Verge Rev の利用をこれから始める場合は、利用環境に合ったクライアントを用意し、プロファイルの内容を理解してから設定を追加すると安全です。