はじめに
Clash Verge Rev を macOS で利用する場合、DNS の処理方法を適切に設定することで、ドメイン名の解決を安定させ、アプリケーションが接続を開始するまでの待ち時間を短縮できます。特に Fake-IP モードは、Mihomo コアを搭載した Clash クライアントで広く使われている DNS 機能です。
Fake-IP は、アクセス先のドメインに対して実際のサーバー IP アドレスではなく、仮想的な IP アドレスを返します。その後、Clash がドメインと仮想 IP の対応関係を管理し、通信をルールに従ってプロキシまたは直接接続へ振り分けます。毎回同じ DNS 応答を待つ方式と比べて、接続先を効率よく判定できる点が特徴です。
この記事でできること
macOS の Clash Verge Rev で Fake-IP DNS を有効化し、プロファイルを安全に編集して、除外ドメインと動作状態を確認できるようになります。
なお、Clash Verge Rev は通信を処理するクライアントであり、プロキシサーバーそのものを提供するものではありません。事前に利用可能なサブスクリプションまたはノード設定を用意し、Mihomo コアが正常に動作していることを確認してください。
1Fake-IP DNS の仕組みと準備
DNS は、example.com のようなドメイン名を IP アドレスへ変換する仕組みです。Clash の fake-ip モードでは、クライアントが DNS サーバーへ問い合わせた際に、設定された Fake-IP 範囲から仮想アドレスが割り当てられます。Mihomo はその対応表を保持するため、後続の接続から元のドメイン名を識別しやすくなります。
設定を始める前に、次の項目を準備しましょう。
- 対応コア: Clash Verge Rev の設定画面で Mihomo または Clash.Meta 系のコアが選択されていること。
- 有効なプロファイル: Profiles から読み込んだ YAML プロファイルがアクティブになっていること。
- 管理権限: macOS の TUN モードを使用する場合、システム拡張や VPN 構成の許可を求められることがあります。
- バックアップ: 編集前に元のプロファイルを複製するか、現在の YAML を別の場所へ保存しておくこと。
先に確認すること
プロバイダーが配布するプロファイルは、更新時に内容が置き換わる場合があります。直接編集した設定を長期的に残したい場合は、Merge 設定やオーバーライド機能の利用を検討してください。
Fake-IP はすべての環境で必ず最適とは限りません。一部の銀行アプリ、ゲーム、仮想マシン、ローカルネットワーク機器は実 IP を前提にしていることがあります。その場合は、後述する fake-ip-filter で対象ドメインを除外します。
2macOS と Clash Verge Rev の基本設定
まず Clash Verge Rev を起動し、利用するプロファイルを Profiles 画面で選択します。プロファイルの横にアクティブ状態を示す表示があることを確認してください。複数のサブスクリプションを登録している場合、編集したファイルと実際に使用しているファイルを取り違えないことが重要です。
次に Settings または General の画面で、コアが Mihomo になっているか確認します。Fake-IP に対応していない古いコアを選択していると、YAML に設定を書いても期待どおりに動作しません。コアを変更した後は、必要に応じて Clash Verge Rev を再起動します。
通信を macOS 全体へ適用したい場合は TUN Mode を有効にします。ブラウザーなどの HTTP 通信だけを対象にするなら System Proxy でも動作しますが、アプリやバックグラウンドサービスの DNS を確実に制御したい場合は TUN モードのほうが適しています。
- macOS のシステム設定で、Clash Verge Rev に求められた VPN またはネットワーク拡張を許可する。
- Clash Verge Rev の TUN Mode をオンにし、実行状態が有効になっていることを確認する。
- ほかの VPN、プロキシアプリ、DNS 変更ツールが同時に動いていないか確認する。
- Wi-Fi を切り替えた後やスリープ復帰後は、必要に応じて TUN Mode を一度オフにして再度オンにする。
3YAML に Fake-IP DNS を追加する
ここで実際にプロファイルを編集します。Clash Verge Rev の Profiles 画面で対象ファイルのメニューを開き、編集機能を選択してください。既存の dns: セクションがある場合は、同じ階層に設定を追加します。YAML ではインデントが構文の一部になるため、タブではなく半角スペースを使い、階層を崩さないように注意してください。
enable: true は Clash 内蔵 DNS を有効にし、enhanced-mode: fake-ip が Fake-IP モードを指定します。fake-ip-range は仮想アドレスに使う範囲です。通常は例の範囲をそのまま利用できますが、家庭内 LAN と重複する場合は変更してください。
nameserver は通常の名前解決に使う DNS、fallback は応答できない場合やフィルター条件に該当する場合の予備 DNS です。DoH や DoT を使うと、通常の DNS 通信より問い合わせ内容を保護しやすくなります。
既存プロファイルに nameserver-policy や proxy-server-nameserver が含まれている場合は、同じキーを重複して記述しないでください。YAML で同じキーが複数あると、コアやパーサーによって後の値だけが採用されることがあります。編集後は保存し、プロファイルを再読み込みしてエラー表示がないか確認します。
4macOS での動作確認手順
設定を保存しただけでは、macOS のすべての通信が新しい DNS を使っているとは限りません。次の手順で、プロファイル、コア、TUN モード、実際の DNS 応答を順番に確認しましょう。
- Clash Verge Rev の Profiles 画面で、編集した YAML を選択してアクティブにします。
- Settings で Mihomo コアが起動中であることを確認し、TUN Mode をオンにします。
- ブラウザーで複数のサイトを開き、Clash Verge Rev の Logs に DNS エラーや接続失敗が出ていないか確認します。
- Connections 画面で対象ドメインを探し、ルールに応じてプロキシまたは DIRECT が選択されているか確認します。
- ターミナルで DNS キャッシュを削除し、ブラウザーを再起動してから同じサイトへ再接続します。
Fake-IP が有効なら、Connections の表示やログで、ドメインに対して仮想アドレスが割り当てられていることを確認できます。サイトが開けても、DNS 問い合わせが macOS の別の DNS サービスへ流れている場合があります。Clash のログ、TUN の状態、システムプロキシの状態を別々に確認するのがポイントです。
確認のポイント
DNS テストサイトの結果だけで判断せず、実際に使用するブラウザーやアプリの接続ログと組み合わせて確認してください。アプリごとに DoH を独自実装している場合、Clash の DNS 設定だけでは制御できないことがあります。
5除外すべきドメインを設定する
Fake-IP は便利ですが、実 IP の確認、特殊な証明書処理、UDP 通信、ローカルネットワーク検出を必要とするサービスでは問題が起きることがあります。その場合は fake-ip-filter にドメインを追加し、通常の DNS 応答へ戻します。
*.lan や *.local は家庭内のルーター、NAS、プリンターなどに使われることが多いパターンです。時刻同期用の NTP ドメイン、macOS や Windows の接続確認ドメイン、オンライン会議やゲームで使われる STUN ドメインも、環境によっては除外したほうが安定します。
ただし、除外リストを増やしすぎると、DNS の問い合わせが意図せず通常経路へ流れたり、ルールによる分流が不統一になったりします。最初から大量のドメインを登録するのではなく、問題が確認できたサービスだけを一つずつ追加してください。サブドメイン全体を除外したい場合は、プロファイルが対応する書式を確認してから +.example.com のような形式を使います。
6よくある問題と解決方法
サイトが開けない、または読み込みが終わらない
まず YAML のインデント、DNS セクションの重複、ポート番号の競合を確認します。次に Fake-IP を一時的に redir-host へ変更し、問題が解消するか比較してください。redir-host で正常に動く場合は、対象サービスを fake-ip-filter に追加すると原因を切り分けられます。
ローカル機器へアクセスできない
ルーターや NAS のホスト名が解決できない場合、*.lan、*.local、使用している独自ドメインを除外します。また、TUN モードの設定で LAN へのアクセスをブロックしていないか、ルール末尾に GEOIP,LAN,DIRECT があるかも確認してください。環境によってプライベート IP の範囲が異なるため、既存ルールを削除する前にバックアップを取ります。
設定が再起動後に消える
サブスクリプションを更新すると、元のプロファイルが再生成されることがあります。直接編集ではなく、Merge 設定、Script、またはオーバーライド機能で DNS 部分を管理すると、更新後も設定を維持しやすくなります。どの機能が利用できるかは Clash Verge Rev のバージョンとプロファイル形式によって異なるため、画面に表示される設定項目を確認してください。
速度が改善しない
Fake-IP は名前解決とルール判定を効率化する機能であり、プロキシノードの帯域や国際回線の混雑そのものを改善するものではありません。複数の DNS サーバーをむやみに追加するより、応答が安定しているサーバーを選び、プロキシグループでは遅延、パケットロス、接続の安定性を比較してください。必要に応じて IPv6 を無効にして、IPv4 と IPv6 の経路差による接続不良も切り分けます。
安全に使うために
不明なプロファイルや DNS サーバーを無条件に信頼しないでください。プロファイルには通信ルールや外部リソースが含まれる場合があるため、出所を確認し、変更履歴とログを定期的に確認しましょう。
まとめ
macOS の Clash Verge Rev で Fake-IP DNS を使うには、Mihomo コアを選択し、アクティブな YAML プロファイルへ enhanced-mode: fake-ip と DNS サーバーを追加します。その後、TUN Mode を有効にしてログと Connections を確認し、ローカル機器や一部のアプリで問題が出た場合だけ fake-ip-filter へ除外ドメインを登録します。
設定は一度に大きく変更するのではなく、バックアップ、編集、再読み込み、動作確認の順番で進めると安全です。DNS の改善と適切な分流ルール、安定したノードを組み合わせることで、ブラウザーだけでなく macOS 上のさまざまなアプリでも、より予測しやすい通信環境を構築できます。