はじめに
Netflix や Disney+ をClash経由で視聴していると、動画は再生できても、普段使う国内サイトまで海外ノードを通るため、ウェブページの表示やオンラインゲーム、銀行アプリの通信が遅くなることがあります。反対に、すべての通信を DIRECT にすると、動画サービスの地域判定や接続品質に問題が発生し、再生開始まで時間がかかったり、画質が安定しなかったりする場合があります。
このようなときに有効なのが、サービスごとに通信経路を分ける分割ルールです。Netflix と Disney+ に関係するドメインだけを動画用プロキシグループへ送り、日本国内の一般サイトや生活サービスは直接接続にします。本記事では、Clash Verge Rev や Mihomo を中心に、ルールの考え方、ノード選び、DNS、TUN モード、動作確認、トラブル対処まで順番に解説します。
この記事の目標
動画サービスだけを適切なプロキシへ振り分け、国内通信の速度とストリーミング再生の安定性を両立します。
1分割ルールの仕組みを理解する
Clash は、受信した通信の宛先ドメインや IP アドレスをルールの上から順に照合し、最初に一致した処理を実行します。たとえば DOMAIN-SUFFIX,netflix.com,Streaming というルールがあれば、Netflix 関連のドメインを Streaming というプロキシグループへ送ります。一致するルールがなければ、最後に置いた MATCH,DIRECT などの既定ルールが適用されます。
重要なのは、Netflix や Disney+ のトップページだけでなく、ログイン、静的ファイル、画像、動画配信 CDN、計測用ドメインなども考慮することです。ただし、ドメインを無制限にキーワード登録すると、関係のないサイトまでプロキシへ送ってしまいます。最初はサービスの主要ドメインを登録し、ログ画面で不足している通信だけを追加する方法が安全です。
- 動画サービス: Netflix と Disney+ に関連するドメインを動画用グループへ送ります。
- 国内サービス: 日本の検索、通販、ニュース、行政サイトなどは
DIRECTにします。 - その他の通信: 最初は既存のプロバイダー設定に合わせ、必要に応じて既定グループを調整します。
- ルールの順序: 動画用の個別ルールを一般的なルールや
MATCHより上に置きます。
覚えておきたい点
分割ルールは地域制限や利用規約を無条件に回避する機能ではありません。契約地域、アカウント条件、プロバイダーの利用規約を確認したうえで、正規に利用してください。
2動画用ノードとプロキシグループを選ぶ
ルールが正しくても、動画用ノードの品質が低ければ再生は安定しません。ストリーミングでは、単純な ping の数値だけでなく、継続的な帯域幅、パケットロス、混雑時間帯の安定性、動画サービス側での利用可否を確認する必要があります。
- 十分な帯域: 高画質再生中に速度が大きく落ちないノードを選びます。短時間の速度テストだけで判断しないことが大切です。
- 低いパケットロス: ping が低くてもパケットロスが多いと、再バッファリングや画質低下が起こります。
- 混雑の少ない経路: 夜間だけ遅くなるノードは、動画用グループの候補から外します。
- 地域の整合性: 視聴したいカタログとノードの地域が一致しているか確認します。
設定ファイル内のプロキシグループ名は、ここでは Streaming とします。実際のサブスクリプションでは Proxy、Global、Netflix など別の名前になっているため、ルールに書く名前とプロファイル内のグループ名を必ず一致させてください。グループ名の大文字・小文字や記号の違いにも注意が必要です。
3Netflix・Disney+のルールを追加する
次の例は、Mihomo 系の設定で使える基本的なドメインルールです。既存のルールをすべて置き換えるのではなく、プロファイルの編集機能や Merge 設定を利用して追加してください。グループ名 Streaming は、実際に使用するグループへ読み替えます。
DOMAIN-SUFFIX は指定したドメインと、その下位ドメインをまとめて対象にする指定です。たとえば nflxvideo.net を登録すると、動画ファイルの配信に使われる下位ドメインにも適用されます。一方、サービス側の構成は変更される可能性があるため、上の一覧だけで必ずすべての通信を網羅できるとは限りません。
Clash Verge Rev では、プロファイルを直接編集する前にバックアップを作成してください。サブスクリプション更新時に手動変更が消える構成もあるため、可能であれば Merge 用の独立した設定として保存します。ルールを追加した後は、プロファイルを再読み込みし、Clash のログで対象ドメインが Streaming に振り分けられているか確認します。
設定時の注意
プロキシグループが存在しない名前を指定すると、ルールエラーや意図しない接続が発生します。変更後にプロファイルの検証エラーが表示された場合は、インデント、カンマ、グループ名を確認してください。
4実際に設定して動作を確認する
ここでは、Clash Verge Rev と Mihomo を想定した実践手順を紹介します。画面の名称はクライアントのバージョンによって異なる場合がありますが、基本的な流れは共通しています。
- Clash Verge Rev を起動し、「Profiles」から現在使用しているプロファイルを確認します。
- 元の YAML ファイルを別名でコピーし、設定を失っても戻せるようにバックアップします。
- プロキシグループに動画再生用のノードを追加し、名前を
Streamingに合わせます。 - Netflix と Disney+ のドメインルールを、既定の
MATCHルールより上へ追加します。 - プロファイルを保存して再読み込みし、必要であれば Clash のコアも再起動します。
- ブラウザーの動画サービスを一度終了し、Cookie や DNS キャッシュの影響を避けて再接続します。
- 「Logs」または「Connections」を開き、対象ドメインのルール名と接続先グループを確認します。
動画を再生している状態でログを確認すると、複数のドメインが短時間に表示されます。Netflix の画像や動画配信ドメインが Streaming になっていれば、基本的な振り分けは成功です。同時に、Google 検索や国内ニュースサイトを開き、それらが DIRECT になっていることも確認してください。片方だけでなく、両方の通信を検証することが重要です。
5DNSとTUNモードを見直す
ドメインルールを使う場合、DNS の処理方法が不適切だと、名前解決の結果と実際のルール判定が一致しないことがあります。Mihomo では fake-ip や redir-host などの方式を選択できますが、利用している端末、アプリ、ルールセットとの相性を確認してください。
fake-ip はアプリケーションとの相性があるため、家庭内機器、ゲーム、動画アプリで問題が出た場合は redir-host を試す価値があります。DNS を変更した後は、ブラウザーの DNS キャッシュや OS のキャッシュを削除し、Clash の DNS 機能が実際に使われているかを確認してください。
ブラウザーだけでなく、テレビやスマートフォンのアプリを対象にする場合は、システムプロキシだけでは通信を捕捉できないことがあります。その場合は、対応端末で TUN モードを有効にします。TUN モードはシステム全体の通信を仮想ネットワークインターフェースへ取り込める一方、権限、IPv6、ローカルネットワーク、ゲーム通信に影響することがあります。まず通常のシステムプロキシで動作を確認し、必要な場合だけ TUN を有効にするのが安全です。
IPv6にも注意
IPv4 だけをプロキシへ送り、IPv6 が直接接続になると、接続先や地域情報の判定が不安定になることがあります。IPv6 を利用する場合は、Clash とノードが IPv6 を正しく処理できるか確認してください。
6再生トラブルの原因と対処法
ルールを追加した後も再生できない場合、すぐにルールを増やすのではなく、どの段階で失敗しているかを切り分けます。まず動画サービスのページ自体が開くか、ログインできるか、再生開始後に停止するかを確認してください。
- ページが開かない: DNS 解決、ノードの接続状態、プロキシグループ名、証明書エラーを確認します。
- ログインできない: 認証関連ドメインが別のルールへ送られていないか、ブラウザーの Cookie が古くないか確認します。
- 再生開始後に止まる: 動画 CDN のドメインが
DIRECTになっていないか、ノードの帯域とパケットロスを調べます。 - 画質が低い: ノードの混雑、ストリーミングサービス側の自動品質判定、家庭回線の上り下り速度を確認します。
- 国内サイトまで遅い: ルールの順序を確認し、広すぎる
DOMAIN-KEYWORDや既定のプロキシルールを見直します。
特に DOMAIN-KEYWORD,disney,Streaming のようなキーワードルールは便利ですが、ドメイン名に偶然その文字列を含む別サービスまで対象になる可能性があります。可能な限り DOMAIN-SUFFIX や DOMAIN を優先し、ログに現れる実際のドメインを基準に追加してください。
ノードを変更すると再生できる場合は、Clash のルールよりもノード側の問題である可能性が高いです。反対に、どのノードでも同じドメインだけが DIRECT になる場合は、ルールの不足またはルール順序の問題を疑います。設定を一度に複数変更せず、ノード、DNS、ルール、TUN の順に一つずつ検証すると原因を特定しやすくなります。
7安定運用のためのチェックポイント
分割設定は一度作成して終わりではありません。動画サービスの配信構成、サブスクリプションのグループ名、Clash のコア仕様は変わることがあるため、定期的に状態を確認しましょう。
- プロファイルを更新する前に、手動で追加したルールと Merge 設定をバックアップする。
- 動画用グループに複数ノードを登録し、混雑時に手動で切り替えられるようにする。
- 速度だけでなく、再生開始時間、バッファリング、画質の維持、音声同期を確認する。
- 国内サイトがプロキシへ流れていないか、ログを定期的に確認する。
- 利用しなくなったキーワードルールを削除し、設定を必要以上に複雑にしない。
- OS、Clash クライアント、Mihomo コアを更新した後は、DNS と TUN の動作を再確認する。
家族の端末やテレビも同じネットワークで利用する場合、端末ごとに必要なモードが異なることがあります。パソコンではシステムプロキシ、スマートフォンやテレビでは TUN 対応クライアント、ルーターではゲートウェイ型の設定というように、通信を取り込む方法を端末に合わせて選んでください。
よくある質問
すべての通信をプロキシにしたほうが安定しますか?
必ずしもそうではありません。動画だけをプロキシへ送り、国内通信を DIRECT にするほうが、日常的な速度や遅延の面で快適になるケースがあります。ただし、利用環境やノード品質によって結果は異なるため、動画再生と国内サイトの両方を実測してください。
ルールに書くドメイン一覧は固定ですか?
固定ではありません。サービス側が認証、画像、動画 CDN などのドメインを変更する可能性があるため、Clash のログを確認しながら不足分を追加します。最初から広いキーワードルールを大量に登録するより、具体的なドメインを段階的に追加するほうが誤判定を抑えられます。
スマートフォンで視聴する場合、TUN モードは必要ですか?
アプリの通信を確実にClashへ取り込むには、TUN や VPN モードが必要になる場合があります。ブラウザーの手動プロキシだけで動作する端末もありますが、アプリ通信や DNS を対象にする場合は、クライアントの権限と VPN 接続状態を確認してください。
ルールを追加しても DIRECT のままなのはなぜですか?
ルールが MATCH より下にある、グループ名が一致していない、別のルールセットが先に一致している、または DNS キャッシュが残っている可能性があります。プロファイルを再読み込みし、ログで実際のドメイン、適用ルール、接続グループを順番に確認してください。
Clash の分割ルールは、動画サービスを特別扱いするだけでなく、通信経路を目的に合わせて整理するための仕組みです。Netflix と Disney+ の再生ドメインを動画用グループへ集約し、国内通信を DIRECT に戻し、DNS と TUN の状態を確認すれば、無駄なプロキシ経由を減らせます。まずはバックアップを作成し、ログを見ながら小さく変更することから始めてください。